小さなハープの製作

横浜、日吉の古民家で、小型で軽く、扱いやすいハープを製作しています。日本画家の妻、中井智子が美しい絵付けを施し、世界でひとつのオリジナルハープがここから生まれています。

ハープとの出会いは、1995年中学生の頃、地元京都で膝の上に小さなハープを乗せて奏でている白髪の男性を見かけたのが始まりでした。雨田光示先生の元で、ナイロン弦のネオ・アイリッシュ・ハープとペダルハープを学びました。

その後、2000年から古様式の金属弦アイリッシュ・ハープの歴史と奏法について研究活動をはじめました。20世紀末には、金属弦ハープは廃れて久しい文字通り「幻の楽器」で、奏法については独学で進めるほかない状況だったのです。

大学院での研究の時期に、アイルランドやスコットランド等の金属弦ハープ奏者、研究者と交流を深める過程で、私もこの楽器の復興活動に生涯をささげる決意をしました。2010年に18世紀アイルランドのハープ音楽についての博士論文を完成させた後、金属弦アイリッシュ・ハープの魅力を伝えるべく、全国での演奏会、ワークショップや講演を展開し、横浜と京都に教室を開講しました。

普及活動の中で楽器を自作できないかと考え、2014年4月初めての一台を独学で作りました。それから、すべて一人で様々な金属弦ハープの設計から製作を手掛け、2024年3月現在で320台を世に送り出しました。英国製のチェンバロ用の弦を張り、温かみのある長い残響音が特徴です。同じ木はふたつ存在しないので、一台ずつ異なる響きになります。

この楽器にあった編曲活動も行っており、大著『20弦ハープで奏でる366の曲集』(2022)を上梓しました。この曲集の真の価値を知ってもらうために、編者自らが一曲ずつ解説しながら演奏するシリーズも横浜と京都で開催しています。

金属弦ハープの演奏と研究のみならず、楽器の設計と制作、編曲をして教えているのはおそらく日本では私しかいないのではないかと思います。

ぜひ皆様に金属弦ハープの奥深い世界を知ってもらえたら幸いです。

2022年からは5千年前から演奏され続けてきた最古のハープ「アーチドハープ」の設計、製作を開始。新たな境地を切り拓いています。この楽器の詳細についてはこちらをご覧ください。

*オーダーメイドハープの製作依頼は、全額先払い、製作後のキャンセルは不可となります。

  • チェンバロ用弦

  • 20弦ハープ用の366の曲集を編纂。

  • 教本も製作しています

  • ほぞ継

  • ノギスで厚みを図りながらくり抜きます

  • 制作年月日と作品番号を書いたラベル

自作のハープ工房で設計、製作しています。

  • 持ち運びに便利な小さな12弦ハープ。333の曲集も編纂しました。

  • ヴィオラのCまで出る24弦。アレンジの幅が広がります。

  • 教室で最もよく使われる20弦

  • アーチドハープの製作、教室もはじめました。

金属弦ハープの奏法

金属弦ハープは、ガットやナイロン、カーボン弦が張られたネオ・アイリッシュ・ハープやペダルハープとは異なる手の形をとります。クラシックのペダルハープと同じ弾き方や力加減で金属弦ハープを弾くと、音が割れてしまい調弦もすぐに狂ってしまうので絶対にやめてください。金属弦ハープは決して「弦を引っ張らない」ことが重要です。引っ張りさえしなければ、爪ではなく指での演奏も可能です。

 

クラシックの手の形では、親指を立てて弾き終えた後、こぶしを握り締めた形にするのが基本です。しかし、金属弦ハープの奏法では、親指から薬指までの4つの指をそろえて親指を寝かせます。弾き終わった後は指先をくっつけるような形、つまり「鳥のくちばし」のような形にします。この手の形を作ると、余計な力が抜けて最小限の動きになるので、装飾音等、繊細な表現が容易になります。また「ダンピング」技法のための指移動も楽になります。

金属弦ハープは、ナイロンやガット弦のハープに比べて、残響音が長いことが特徴です。ただし、音が重なってしまうため、不要な音を消音しながら演奏します。この奏法を「ダンピング」と呼んでいます。この技法は古くからアイルランドやウェールズで用いられていたことがわかっていますが、20世紀後半にアン・ヘイマンが体系的に整理しました。表現の幅を広げ、美しい音で演奏するためにもぜひとも身につけたい基礎的技法です。

たとえば、ドレミという音を弾くとき、最後にミを弾くのと同時にレの弦に指を戻します。それにより、ドミの3度の美しい残響音が残ります。

その他、残響音を活かした奏法や装飾音があります。独学で習得するのは難しいと思うので、詳しく学びたい方はぜひ横浜か京都の教室にお越しください。

  • 指を深くかけない

  • 鳥のくちばしのような形

  • 少しでも爪があるとクリアな響きに

臨時記号の音を弾くには

金属弦ハープはレバーハープのように半音を変化させる機構がないので、臨時記号を弾くときは、オクターヴごとに調弦を変える、変則調弦(スコルダトゥーラ)や、爪やハープピンを用いて変化させます。

基本的にアイルランド、スコットランドの音楽は臨時記号を使わず、ドリアやミクソリディアなどの旋法を使って楽曲に変化をつけています。18世紀以前のアイリッシュ・ハープ奏者はC(調号なし)かG(#ひとつ)しか用いなかったといいます。拙著『20弦ハープで奏でる366の曲集』(2022) はその考えをもとに、ほとんど調弦を変えずに弾ける編曲を行いました。

曲の最後でコードをメジャーにするために左手の爪を当てています。

ハープピンを弦の下に当てて半音上げています。

オクターヴごとに違う調弦を用いたスコルダトゥーラの例。楽器にあったアレンジを自分で考えます。

アイルランド伝統音楽を弾くときにはこれらの技法は基本的に用いません。臨時記号を使ってバッハやダウランドなどいろいろな曲を弾きたい方は「アーチドハープ」をお勧めします。レバーハープよりも半音変化が楽で、2つの音を同時に変化できるのが特徴です。

一時的な半音変化が非常に楽です

2つの音を同時に半音上げるのも楽です

後半部分のクロマティックな動きはレバーハープでは難しいです。